Medical Scope
早期発症の妊娠中毒症
島田 信宏
1
1北里大学病院産婦人科
pp.423
発行日 1996年5月25日
Published Date 1996/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901476
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妊娠中毒症に関しては,最近になって多くの新しい見解が登場してきたことは,この欄を愛読してくださっている方なら何回もお話したのでよくおわかりのことと思います。そのなかでも,にわかに論じられるようになったのが,この表題にある早期発症型の妊娠中毒症のことです。
一般に,妊娠中毒症は昔から「晩期妊娠中毒症」といわれたように,妊娠末期になって出現してくるものとされていました。大体,妊娠34〜35週頃になって著明に症状が出てくるというのが多いのではないでしょうか。しかし,よく考えてみると,ときには妊娠23週頃から高血圧やたんぱく尿がでてきてしまう症例もあるのです。このように,妊娠20週台から出現してくる症例のことを「早期発症型の妊娠中毒症」というようになりました。なぜこのように特別の名称をつけて呼ぶようになったか……というと,そこには大変大きな問題が含まれていたからです。この早期発症型の症例を検討していくと,非常に予後が悪いと結論されてしまうのです。母体の予後も胎児の予後も悪いのです。母体は分娩後も慢性腎炎が残ったり,慢性腎不全で人工透析になる症例が多かったり,胎児はIUGR(子宮内発育遅延)の状態がひどく,胎児死亡になったり,出生できても発育障害が残ったりする症例がとても多いのです。皆さんのなかにも,このように予後不良の早期発症型の妊娠中毒症の症例を経験された方が大勢いることでしょう。
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