特集 産科診療所の新しい風
自然な出産とその援助/42歳の初産婦も感動の出産を
久 靖男
1
1久産婦人科医院
pp.378-383
発行日 1993年5月25日
Published Date 1993/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900798
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はじめに──人間的な出産が求められるようになった背景
お産の歴史の中で過去30年間ほど産科学の進歩の影響を受けた時代はない。そのさなかに産科医となった私たちは,その医学の進歩の恩恵に十分にあずかってきた。具体的には,妊娠中いかに多くの胎児情報を得るか,いかに安全に分娩を管理するかというものであった。
医療技術の進歩と共に,世界の先進国の中では周産期の安全性において成績の極めて悪かった日本が,今では最も成績の良い国となり,それと共に世界一の長寿国となったのである。しかし出産における母児の安全性が追求されるあまり,出産はほとんどすべて施設内分娩となり,出産のもつもう1つの重要な側面,つまり出産は人間的な営みであり,性的な体験の延長線上にある個人的で自然で生理的な現象であることが忘れられてしまった。
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