連載 とらうべ
「出産」の講義に感動する男女大学生たち
舩橋 惠子
1
1桜美林大学国際学部(社会学)
pp.443
発行日 1994年6月25日
Published Date 1994/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611901030
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昨秋,東京大学で社会学特殊講義という枠で自由に講義する機会を得た。そこで,「産育の比較社会学」と題して,出生率低下,現代の出産,女性が働き続けること,産育保障システム,産育に参加する男たち,家族や生活文化の国際比較といったトピックスを,13回にわたって話した。全体に具体的な資料を示したが,特に出産については,ビデオもみせてリアルに話を進めた。このようなテーマに,果して何人の学生が関心を持つだろうかといささか心配だったが,意外に大勢の聴講者があった。
やはり女子の受講率は高めで,4割ぐらいだった。概して女子学生は,出産の問題を自分がいずれ直面するであろう重要な課題として切実に受け止め,医療化された現代のお産の実態にショックを受け,産む/産まないを迷い,子どもを育てながらどうやって仕事を続けていくかを悩んでいる様子がみえる。彼女たちの質問やリポートには生きた〈問い〉がある。彼女たちは,これまで男子よりよい成績をとり,女性だからといって特に差別されているとは感じていなかったようだが,就職や産育を目の前にして,いままでの自信にちょっぴり不安がみえる。しかし,のびのびと育った若い世代の女性にこそ,出産・育児の壁を乗り越えて進んでいって欲しいと願わずにはいられなかった。
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