特集 「母性」を心理学からとらえる
「母性の心理」ブックガイド
大日向 雅美
1
1恵泉女学園大学人文学部
pp.200-205
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900524
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はじめに
母性を心理学からとらえる意味
最近の動きをみると,助産をはじめとした医療領域の母性に対する関心のありかたに,ひとつの変化が生じているようである。一昨年の助産婦教育課程の改訂にともなって,「母性の心理・社会学」が新たに設けられたのも,それを端的に表わしているように思われる。
従来,助産領域の母性に対する関心は,主として妊娠・分娩・哺乳にかかわる女性の生理的な特性に限られてきた傾向がある。女性が母となる過程や子どもの発達の過程に生じる心理的な側面への理解,そして,そこに影響を及ぼす社会的・文化的な背景に対する関心と理解は,これまで必ずしも十分ではなかったといえよう。生理的側面への関心が優先されてきたのは,医療現場で母性を扱うときの,いわば当然の帰結であったかもしれない。しかし,ひとの「こころ」への理解,そして,そのひとが生きている現実の社会的背景への関心は,助産領域にとっては,からだへの関心や理解と同様に欠くことのできない視点である。こうしたことへの「気づき」が,冒頭で述べた新しい動向をもたらしているといえる。
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