特集 母性・父性から「育児性」へ
母性・父性から「育児性」へ
大日向 雅美
1
1恵泉女学園大学・心理学
pp.743-747
発行日 2000年9月25日
Published Date 2000/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902477
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子育てとは
子育ては手間のかかる苦労がある反面,幼い命の成長過程を間近にみる喜びもまた大きいものがある。全幅の信頼を寄せて無心に慕ってくる存在を全身に受け止めながら,私たちは愛される喜びにとどまることなく,人を愛し,他人に尽くす喜びを知ることができる。また,人は子どもの姿にわが身の幼い日々を重ねて,生い立ちの一こま一こまを懐かしく思い出すことができる。時には手のかかる子どもに苛立つこらえ性のない自分を発見して,わが身の弱点や未熟さを痛感させられることも少なくない。また子どもと触れあう日々を重ねていると,子どもの将来を思う気持ちから,子どもが生きる時代の先行きに思いを馳せることにもなる。
こうして,愛する喜びを経験し,懐かしい昔の自分に出会い,時には今の自分自身について新しい発見をしながら,子どもの未来に夢をつなぐことができる子育ては,人の営みの中でも意義大きいものの一つと言ってよいであろう。そうした数々のすばらしい出会いをもたらしてくれる子育ては,苦楽両面含めて,親は無論のこと,子どもの有無や性別に関わりなく,広く人々がそれぞれの立場で分担する体制が築かれれば,私たちの暮らしはいっそう豊かなものになろうし,同時に子どももまた,周囲の多くの人々の目に見守られて,豊かな成長が保障されよう。
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