特集 「母性」を心理学からとらえる
わが国における母性心理研究の歴史と現在
花沢 成一
1
1日本大学・文理学部(心理学)
pp.186-190
発行日 1992年3月25日
Published Date 1992/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900522
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はじめに
1991年10月に東北大学の主催によって仙台で開かれた「日本心理学会第55回大会」におけるシンポジウム『父性の地位とその意義』の企画者であり司会者でもあった東北大学の寺田晃教授は,はじめの挨拶の中で「近年,母性に関する研究はたくさん行なわれているが,父性についての研究は少ないので,このシンポジウムを企画した」というようなことをいわれた。このお話を聴きながら筆者は,しばし感慨にふけったものである。
今から15年ほど前には,心理学者による母性の研究は,非常に少なかったものである。母性の心理とか妊産婦の心理とかいうような問題をテーマとしての心理学的な研究や書物はありそうでいて,あまりなかったのが実際であった。心理学者はこの問題について,関心を抱くことがほとんどなかった。実は今でもそうなのだが,心理学事典の中には,“母性”という事項は存在しなかったのである。
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