MEDICAL SCOPE
腹腔鏡を利用した骨盤内細菌感染症の治療
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.177
発行日 1992年2月25日
Published Date 1992/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900517
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不妊症の大きな原因の1つに,骨盤腔内の細菌感染による炎症があることはすでに皆さんも知っていることでしょう。経腟的に何らかの原因(主として,子宮内容除去術や性生活)によって細菌が子宮をとおして上行感染して,卵管や卵巣に炎症をおこす付属器炎,卵管膿腫,卵巣膿瘍,もっとひどくなると骨盤腔全体にダグラス窩を中心に骨盤腔膿瘍をおこすのです。たとえ,これが治癒しても,大変複雑な癒着を残すので卵や精子の通過障害のため,後に不妊症になることが多くなります。
そのようなとき,従来の治療法は,発熱が著しい急性期や腹痛の強い時期では,まず強力な抗生物質で細菌をたたいておいて,落ち着いてきたら膿瘍などは開腹して取るといった方針が取られていました。しかし,この疾患にはなかなか抗生物質が効かないのです。というのは,どうも骨盤腔内のダグラス窩近くは,抗生物質の移行が悪く,全身的に投与して血中濃度は上がっているにも拘らず,骨盤内で炎症のおこっている臓器の組織内濃度は,他の臓器に比べて比較的薄いことがわかってきました。ですから,他の臓器の細菌感染症を治療するよりも時間が長くかかるのです。そこで,急性期に思いきって開腹手術に踏みきることもあるのですが,細菌を腹腔内にばらまく結果になることもあり,この方針は勧められないものとされていました。
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