特集 母子感染—最新知見と対応
エイズウイルス(ヒト免疫不全ウイルス)
相良 祐輔
1
,
久保 隆彦
1
1高知医科大学産科婦人科学教室
pp.982-988
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900449
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1981年に男性同性愛者で最初に報告されて以来,1991年4月30日までにWHOに報告された世界のエイズ患者数は345,534人である。しかしながら,WHOは,未報告者を含めると実際の患者数は約100万人,感染者数は800万人に達すると推定しており,その多くが生殖年齢層で占められていることを考えると,今後,産科医・助産婦がエイズ合併妊産婦,HIVキャリア妊産婦ならびにその児を取り扱う機会が増加することが予想される。
エイズウイルスと妊娠との関係は,他のウイルスと同様に垂直感染(母子感染),水平感染の問題があるが,エイズは発症すれば致死的であるだけに,キャリアに対する社会的反応も大きく,キャリア妊婦を管理するというだけでパニックにすらなりかねない。このためHIVキャリア妊婦を管理するに際して,医療従事者は患者ならびに家族のプライバシーを保護したうえで,垂直感染,水平感染に慎重に対処しつつ,こうした妊婦がおかれた心理的・社会的環境を十分に理解し,たとえ出生した児がキャリアになろうとも,母親が孤立し児を心理的避難所に擬せぬように,母と子の絆が正しく形成されるように配慮と努力をしなければならない1)。
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.