特別寄稿
エイズウイルスキャリアの周産期ケア
相良 祐輔
1
,
浅井 政房
1
1高知医科大学産科婦人科学教室
pp.896-901
発行日 1988年11月25日
Published Date 1988/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207503
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はじめに
1988年8月の厚生省エイズサーベイランス委員会の発表によれば,わが国のエイズ患者は同年5月の時点より10名増加し,90名となり,HIV*感染者も1048名と増加している。血液製剤による感染以外のHIVキャリア(抗HIV抗体陽性者)の動向も考えると,HIVキャリアの妊娠・分娩例の増加は十分予測される。HIVキャリアのエイズ発症率は感染後6〜9年で50%ともいわれており,発症後の死亡率は5年後にはほぼ100%となっている。
このように,現状でのHIVキャリアをめぐる問題は,医療従事者における水平感染の防止問題のみならず,母子感染の防止,HIVキャリア妊婦のエイズ発症の防止,分娩後の母子相互関係の確立,妊婦および家族の心理的問題,また社会的には人権問題も含めたプライバシー保護の問題などが複雑にからみあい,多岐にわたっていることが認識されつつある。
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