特集 母子感染—最新知見と対応
成人T細胞白血病(ATL)ウイルス
武 弘道
1
1鹿児島市立病院小児科
pp.975-981
発行日 1991年11月25日
Published Date 1991/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900448
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はじめに
成人T細胞白血病ATLのウイルス(現在ではHTLV-Iと呼ばれている)が発見されて10年が経過した。その間に本ウイルスの感染に関する多くの研究がなされ,1988年から1990年の3年間には厚生省が「成人T細胞白血病の母子感染防止に関する研究班」を全国的規模で構成し,本ウイルスの感染防止対策を検討した。
この研究班の研究で種々の新知見が得られた。従来母乳中止の介入をしない場合の母子感染率は30〜80%と考えられていたが,実際には15〜25%であること,ほとんどまれと考えられていた子宮内感染も3〜10%あること,夫婦感染も意外に多くて20歳台で20%あり,年齢が加わるうちに40%ぐらいになると予測されることなどである。結論としては,ATLウイルス栂子感染対策に全国的に統一して実施できるものが作りにくいということになった。
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