今月の臨床 エイジングと生殖医療
エイジングと配偶子,受精卵の染色体異常
中岡 義晴
1
1IVF大阪クリニック
pp.1356-1361
発行日 2006年11月10日
Published Date 2006/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101306
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はじめに
近年,社会環境の変化による晩婚化や共働き夫婦の増加などにより,妊娠,出産の年齢が上昇する傾向にある.さらに,生殖補助医療をはじめとした不妊治療の進歩が今までは不可能と考えられていた夫婦に対する挙児の可能性を生み,高齢夫婦にも不妊治療の機会が増加している.その一方で,加齢が及ぼすさまざまな要因が,妊娠率の低下,流産率の上昇,さらに新生児の異常の増加を引き起こしている.その最大の要因が,配偶子および胚の染色体異常である.21番染色体トリソミーであるダウン症の発生頻度は,40歳の女性では30歳の約10倍と,年齢が高くなるにつれて発生頻度が高くなることがわかっている.さらにその余剰染色体のほとんどが母親由来で,さらに第一減数分裂時に生じていることが分子細胞生物学的検査からわかっている1).自然流産において,女性年齢が高くなるにつれて流産率が上昇するのに加え,流産児における染色体異常児の割合も30歳未満では約50%に対して38歳以上では90%以上と高くなっている2).
今回,生殖医療において最大の問題となっている年齢のエイジング,さらに体外培養などによるエイジングの観点から,配偶子および受精卵における染色体異常について概説する.
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