特集 受精革命
体外受精卵移植と今後の問題点
岩城 章
1
1東邦大学医学部第二産科婦人科学教室
pp.10-16
発行日 1983年1月25日
Published Date 1983/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206162
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はじめに
われわれヒトの受精は通常,卵管膨大部で行なわれる。しかし卵管腔が閉鎖している卵管閉塞症の婦人では,卵子と精子が出会うことはなく,したがって受精はおこらず,臨床的には不妊症となる。このような原因による不妊症の治療として,以前から手術療法すなわち卵管形成術が行なわれている。しかし閉塞部の修復だけでは卵管機能の改善を期待できないほど,病変の進んだものでは,形成術によりたとえ卵管の通過性が得られるようになっても,妊娠の成立はむずかしい。
そこで考えられたのが卵巣の子宮内移植や人工卵管である。前者は卵が直接子宮腔内に排卵されるように手術を行ない,子宮腔内で受精させ,着床させようとの意図である。文献的には妊娠例の報告もあるが,きわめて成功率の低い方法である。筆者らが10年以上前に数年間にわたって約50例について試みたが,明確な妊娠例は得られなかった。後者は卵管の卵輸送路としての働きを人工ゴムなどによって,代用させようとする方法であるが,異物反応が強く,動物実験,臨床例とも体内に埋め込んだ人工卵管を取り出さざるをえなかった。
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