Medical Scope
抗リン脂質抗体と胎児(1)
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.449
発行日 1991年5月25日
Published Date 1991/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900329
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全身性エリテマトーデスsystemic lupuserythematodes(SLE)という膠原病が,若い女性に好発するものであるということは,皆さんもすでによく知っていることと思います。若い女性に好発する疾患ですから,当然ながら妊娠する症例も多くなり,産科外来のハイリスク妊婦,合併症妊娠例の代表的疾患にとりあげられています。読者のなかにも,何例もの症例を経験した方がおいででしょう。妊娠中になにごともなくうまくいく症例もありますが,なかには,何回もの流産・死産をくり返す症例がかなりあります。ひとつの疾患でどうしてこのように予後のよい群と悪い群と明暗がわかれてしまうのでしようか。長い間のこの疑問に対して,5年前ぐらいからかなり明快な解答が出されるようになり,妊娠中の管理対策もどうやら成功するようになりました。
全身性エリテマトーデスの患者さんのなかには,抗リン脂質抗体とよばれる自己免疫抗体をもっている例ともっていない例があります。何種類もの抗リン脂質抗体のうち,ループス・アンチコアグラントlupus anticoagulant(LAC)は,ヒトのからだの中では血液を凝固させ,血栓を作るように働きます。しかし,試験管のなかでは反対に出血傾向を作る性質をもつ抗体です。
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