連載 とらうべ
産婦のケアはスタートケア
大橋 一夫
1
1仙台逓信病院産婦人科
pp.183
発行日 1991年3月25日
Published Date 1991/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900273
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分娩は産婦の心の体験でもあり,不安や恐怖との闘争である。ストレスは人生のスパイスといわれるが,陣痛の苦しみの体験は,人生そのもの,人生が凝集したものと考えられる。
分娩の陣痛の苦しみは,人生は苦であるということを教えてくれている。また,陣痛の苦しみは,子が生まれる喜びを感ずるために必要な苦しみである。陣痛は,本当に人のために何かをするには自己犠牲が必要なことを教えている。愛とは自分の大切なものを相手にあげること,自己犠牲であることを教えてくれている。人間が共存するには自己犠牲が必要である。家族の共存にも自己犠牲が必要である。親になり大人になるということは,我慢強くなること,我慢強くなることはセルフコントロールできるようになることである。陣痛の苦しみに耐えて辛抱することは,人生の一つの目標として,セルフコントロールの完成があることを学ぶことのように思われる。セルフコントロールの完成は自己実現の完成である。これが真の自由であり,真の幸福であると考えられる。
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