特集 妊産婦のリラクセーション
出産におけるリラックスの効用
九島 璋二
1
1九島産婦人科院
pp.669-676
発行日 1990年8月25日
Published Date 1990/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900148
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はじめに
1960年代自然出産を志向する米国の女性たちによって多く読まれたのは,リード博士の「恐怖なき出産」であったが,彼がこの本を書くきっかけとなったのは,鎮痛薬を拒否し,ごくあたりまえにお産をしてみせた女性に出会い,お産というものは恐怖心による緊張がなければ,すなわち心身共にリラックスしていれば,あまり苦痛は伴わないものだということを観てとったからである。私の臨床経験でも,このような妊婦に出会うことはあるが,非常に稀である。
そこで自然出産をする女性たちを恐怖や緊張に追い込むものについて考えてみると,まず考えられるのは誤った情報から得た陣痛に対する「痛い」「苦しい」といった偏見であり,次に産む本能を失っていることへの恐怖である。すなわち便利な物質文明の中での生活は機械に依存し,お産も医療に依存するようになった結果,理性偏重で身体感覚や感性を失い,自力でお産する技法も能力も失っていることへの恐れである。そしてもう一つ個人の内面からみれば,無意識領域にあるといわれる陣痛に刺戟されて意識化される情動コンプレックス,殊に恐怖の感情である。そこで出産準備教育では,これら恐怖や緊張対策として,陣痛を受容し,心身をリラックスきせてお産に臨む技法を身につけてもらうことが重要な課題となる。
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