Medical Scope
IUGR症例の予後
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.701
発行日 1989年8月25日
Published Date 1989/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207681
- 有料閲覧
- 文献概要
今月号まで日本周産期学会のIUGRについての話題がつづきます。今回は少し臨床的な予後の点にふれてみたいと思います。IUGRの生命予後を大きく考えてみると,妊娠32週という週数がひとつ取り上げられます。妊娠32週はIUGRの予後の良否の境い目となっていて,それ以後の症例は比較的予後がよいのに,それ以前のIUGRは予後が大きく悪くなるのです。未熟性という大きな負担がのしかかってくるためであろうことは容易に想像されます。この意味からもなるべく,IUGRは妊娠32週以後に生ませたいものです。
母体に妊娠中毒症などのリスク因子がないのに,胎児がIUGRのことがあります。このような症例では突然に胎児死亡となるようなこともありますが,その原因としてもっとも多いのは臍帯因子で,長さ,付着部位,捻転などの異常なのです。この点も超音波断層診断などを利用して管理上私たちは知る必要があります。また,奇形や先天異常のIUGRも胎児死亡となりますが,これらを含めて死産となるようなIUGRの妊娠中の一大特徴は,子宮底長が妊娠早期から伸びない,大きくならないということです。ですから,私たちが日常の診察のときに実施している子宮底長の計測も,大変に大きな意義をもっていることがわかります。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.