特集 エイズ,ATL,STD
ATLの現状とケア
一條 元彦
1
,
斉藤 謙介
1
1奈良県立医科大学産婦人科学教室
pp.551-555
発行日 1988年7月25日
Published Date 1988/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207418
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成人T細胞白血病(adult T-cell leukemia,ATL)は,1977年高月ら1)により初めて報告されたもので,多くは40歳代以上に発病し,いったん発病すると予後は非常に悪く患者の大半が発病後2年以内に死亡する。主要症状は,リンパ腫,肝腫,脾腫,高カルシウム血症,皮膚紅斑,丘疹,結節などである。このATLは,カリブ海沿岸地域,西インド諸島,アフリカにも報告をみているが,特に日本において多発するのが不可解な点である。日本では,九州,沖縄など南西地域が流行地とされてきたが2),最近の疫学調査では図1のように全国各地に広く存在することが判明した。
ATLは,ウイルスによる発癌が人類史上初めて明らかになった疾患である。ATLの病因ウイルスはHTLV-I(human T-lymphotropic virus type-I)と命名されているが,HTLV-Iは形態学的にはC-タイプレトロウイルスに属し3),逆転写酵素をもつRNAウイルスである。一般にHTLV-Iは循環血液中を自由に行動するウイルス(フリーウイルス)としては存在せず,T細胞の染色体中のDNAに組み込まれて存在する。それゆえHTLV-Iの感染成立には,HTLV-Iの感染を受けたT細胞が他の正常なT細胞と接触することが必要であり,細胞間の接触を介して感染する。
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