特集 障害をもった妊産婦への援助
身体障害者の妊娠・分娩・産褥管理
春名 充
1
,
青野 敏博
1
1徳島大学医学部産科婦人科学教室
pp.103-106
発行日 1988年2月25日
Published Date 1988/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207316
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はじめに
身体障害のある両親は,それに伴う様々な身体的・社会的ハンディキャップを乗りこえて出産を迎えるわけであり,分娩が近づくにつれて,はたして健常な子供を生むことが出来るかどうかという不安も強い一方,子供の誕生に対する期待や出生の喜びは想像以上のものがあると考えられる。ところでわれおれ産科医療従事者がこれらの症例に遭遇した場合,患者とのコンタクトをいかに取るか,妊娠経過中に種々の身体障害が増悪しないかどうか,経腟分娩時に必要な姿勢を取ることが出来るか,分娩に有効な陣痛が発来し,十分な腹圧をかけるこが出来るかなどが問題点となる。また分娩後には育児の際に遭遇する様々の障害についても良きアドバイスを与える必要がある。
ところで,身体障害者とは,「身体障害者福祉法」により視覚障害,聴覚障害,平衡機能障害,音声機能または言語機能の障害,上肢・下肢・体幹の障害,心臓・呼吸器・腎臓機能障害を有する18歳以上の者であって,都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいうが,本稿の主旨からはこれらの厳密な定義に従って論ずることは意味が少ない。そこで本稿では,産科臨床において比較的遭遇しやすい疾患である(1)股関節の開排障害,骨盤の変形,(2)重症筋無力症,(3)脳性麻痺の症例について述べることにする。
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