特集 心疾患合併妊娠
心疾患と妊娠・分娩・産褥の病態生理
松浦 俊平
1
1愛媛大学医学部産婦人科
pp.102-109
発行日 1985年2月25日
Published Date 1985/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206589
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はじめに
妊婦は,胎児の育生を目的として,妊娠子宮をはじめ,ほとんど全身の臓器に,形態の上でも機能の面でも特有な変化を起こすが,循環系でも妊娠の比較的早期から大きな変化が現われてくる。したがって,もしもこの変化に充分に適応しきれないような心疾患などの循環器系の障害がある妊婦では,母児の生命にもかかわる重大な結果を招くことも考えられる。実際,心疾患の合併が妊産婦死亡の主要な原因となっていることからみても,妊娠に伴う偶発合併症のうちでは最も重視されなければならないものであると言うことができ,また母体死亡に至らないまでも,妊娠・分娩を経過したことによって心疾患が悪化し,育児にたずさわることもできずに長い療養生活に就くようなことがあっては,やはり家族にとっては大変不幸なことである。
このような意味から,妊娠・分娩を経過する間にどのような負担が心臓にかかってくるものなのか,心疾患自体がどういう影響を受け,またその負担に耐えることができるかどうかなどを科学的な根拠に基づいて理解し,判定することは心疾患を持つ妊婦を管理していく上できわめて重要なごとであり,そのための基礎となる心疾患合併妊産婦の病態生理を中心に解説を加えてみたい。
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