特集 母性とはなにか
人間(ヒト)の構造から「母性」を問う
小原 秀雄
1
1女子栄養大学(動物学)
pp.12-18
発行日 1987年1月25日
Published Date 1987/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207046
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いまなぜ母性を問うのか
先般,ヒトをテーマとした哺乳類学のシンポジウムで,筆者は人間が自然を人間化し社会化し,それを介して自分自身を家畜や飼育野生動物のような状況においているという話題を提供した。このありかたが,ヒトと人間の存在形態の論理だといいたかったのである。同じパネラーの遺伝学者は,討論の中で,家畜化を規定するには飼育馴化よりも,繁殖の管理が基本で,ヒトは妥当しないのではないかと述べた。それに対し参会の学会員からまた,人間は繁殖を管理されていないだろうか,母性であることも管理下にあるのではないかとの疑義が表明されたりした。
シンポジウムの紹介が本旨ではないのはいうまでもないが,バイオテクノロジーをはじめ男女産み分けなど,人間の内なる自然──ヒトのすべて,母性までもが文明化,社会化され,管理が加えられてきつつあるのが現状である。
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