連載 母子栄養1ページレッスン
妊婦と食塩[2]低塩への慣れ
西村 薫予
1
1自治医科大学附属病院栄養部
pp.824
発行日 1985年9月25日
Published Date 1985/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206732
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「ミルクティーとトースト1枚(蜂蜜っき),果物1個」これは若い女性が毎日くり返しているといわれる最もポピュラーな朝食スタイルである。この献立を妊婦のものとして分析すれば,「良質蛋白質は不足気味。エネルギー量,鉄,カルシウムも少ないのでは……」と,次々と不完全食の理由があげられるだろう。一方,食塩量はどうだろうか?トーストに含まれている食塩は1.2%ぐらいだから多く見積っても1g弱,食塩摂取の面からみれば理想的と評価されかねない。
ところで,このことについて警告しておきたいことがある。それは,ある特定の栄養素の摂取や回避に目を向けすぎて,全身栄養のバランスを保つという基本的な問題を忘れないようにしたいということで,食塩回避に目を向けすぎて妊娠中の栄養バランスが後回しになってしまったり,コレステロールを避けようとして卵や肉を食べないために低蛋白状態を招くといったことがその典型例である。食事に対するこのような考え方は,食品選択だけで栄養改善をしようとする安易な発想といってよい。
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