特集 いま求められる肝炎の知識
ウイルス肝炎―その病態と診断
B型肝炎
折戸 悦朗
1
1名古屋市立大学大学院臨床分子内科学
キーワード:
HBe抗原
,
セロコンバージョン
,
ジェノタイプ
,
自然経過
Keyword:
HBe抗原
,
セロコンバージョン
,
ジェノタイプ
,
自然経過
pp.676-679
発行日 2003年8月1日
Published Date 2003/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100670
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Case
悪性リンパ腫の治療後にHBs抗原陽性となりALTの急性増悪を認めた1例
患 者:50歳,男性.
既往歴:とくになし.
家族歴:母親がHBキャリア.
現病歴:約6カ月前に頸部リンパ節腫脹にて当院血液内科を受診,生検にて悪性リンパ腫と診断され入院.CHOP療法を行ったところ,リンパ節は縮小したが,急にALTが3,500 IU/lと急上昇し,黄疸も出現した.治療前検査ではHBs抗原は陰性,HBc抗体陽性であったが,ALT上昇後にはHBs抗原陽性であった.ラミブジン投与によりすみやかに肝機能は改善した.
B型肝炎の疫学
わが国のB型肝炎ウイルス(HBV)の感染率は1%強と考えられ,人口から換算すると150万人ぐらいいると推定されている.日本を含めアジア諸国におけるHBV感染は,その大部分がHBV感染患者(HBキャリア)の母親からの母児感染が主たる感染ルートであり,さらに乳幼児期における水平感染も含め,この時期までの感染によって生涯持続感染者となり,いわゆるHBキャリアとなるわけである.それ以後の成人期の感染では,急性肝炎ないしは劇症肝炎となるが,ほとんどの例では一過性感染で収束すると考えられている.ただし,欧米では,これらの成人期の感染でも持続感染化する例が少なくなく,ホストの違いや,ウイルスのジェノタイプ(J1)の違い,あるいはHIV感染の合併などがその理由のひとつと考えられている.
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