今月の主題 慢性肝炎をめぐる諸問題
成因からみた慢性肝炎
B型肝炎
矢野 右人
1
Michitami YANO
1
1国立長崎中央病院・消化器科
pp.878-881
発行日 1980年6月10日
Published Date 1980/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402216552
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はじめに
B型肝炎ウイルス感染による急性B型肝炎は,ごく一部劇症肝炎へ移行する例を除き,成人では予後良好で,慢性肝炎あるいはHBs抗原持続保持者(carrier state)へ移行することは原則的にないことが次第に判明してきた.
一方,HBウイルスの母児感染によるcarrier state成立が明らかにされ,わが国に約300万人存在するとされるcarrier stateの大多数が出産直後より小児期までの感染によると推定されるに至った.したがって,B型慢性肝炎の起源は成人後のB型肝炎ウイルス初感染によるものではなく,幼小児期より次第に慢性肝炎として完成されていくものと思われる.これは輸血などによる成人後の非A・非B型慢性肝炎の発症とは明らかに異なる.臨床上B型慢性肝疾患とされるのは全carrierの約10%である.他は無症候性HB抗原保持者(asymptomatic carrier state)であるが,これらウイルス学的慢性感染症と肝組織像よりみた肝の慢性炎症の間に大きなギャップがあり,区分が不明確である.HB抗原検出が容易に行われるようになり,carrier stateの発見,およびそのfollow-upより,軽症例あるいはasymptomaticcarrierとの境界例がとり上げられ,B型慢性肝炎としてとり上げられる例が幅広くなってきたといわざるをえない.
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