特集 妊娠中毒症--病態理解から看護へ
妊娠中毒症における母児の予後について
本多 洋
1
1三井記念病院産婦人科・母性保健部
pp.657-664
発行日 1984年8月25日
Published Date 1984/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206496
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
妊娠中毒症についての学術的な理論や概念は常に変化しているといってよい。特に最近は,名称すらも(EPH-gestosisやPIH〔pregnancy induced hypertension〕などのように)変わったものが提唱されて,わが国でもその受け入れ方について混乱がみられるようになっている。このように考え方が流動的なのは妊娠中毒症という疾患の宿命といって差し支えないが,そのために統計情報の作成や施設間の成績の比較などが昔よりもいっそう困難となってきていることも実情である。
このたび,妊娠中毒症における母児の予後について執筆の依頼をうけ,妊産婦死亡や周産期死亡などを中心に述べるようにとのことであるが,上述のような理由で数字的には必ずしも(最近の概念に照らして)正確なものは挙げえない。しかし,概念・定義とは別に,妊娠中毒症という病態そのものは厳として存在する以上,そしてこの疾患が母児に対して重大な影響を及ぼしうるものである限り,その大まかな予後を把握しておくことは母性看護の担当者にとり大切なことはいうまでもないであろう。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.