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I.はじめに
生体の内部環境は主として神経系と内分泌系によって調節されている。両者の間には密接な相互関係が存在する。視床下部は両者の一つの接点として神経内分泌学的にも重要な領域である。
視床下部には直接下垂体に作用する視床下部ホルモンの他に古くから神経伝達物質として知られている種々のアミンやアミノ酸,最近新しい神経伝達ないし調節物質として注目されている種々の神経ペプチドが存在する(表1,2)。
下垂体前葉ホルモンの分泌は,視床下部中央隆起部より下垂体門脈血中に放出される分泌促進因子releasing factorないしは分泌抑制因子inhibiting factorによって直接調節されている。このような視床下部ホルモンを放出するニューロンは上述のいわゆる神経伝達物質を有するニューロンとシナプスを形成し,種々の情報を受けていると考えられる。神経伝達物質の一部は直接下垂体門脈内に分泌され下垂体に直接作用する。脳内アミンと種々の下垂体ホルモン分泌との間には表3に示すような関係が知られている。
視床下部は下垂体前葉ホルモン分泌調節に関与するのみでなく,後葉ホルモンの産生放出,膵消化管ホルモンなどの分泌調節,飲水摂食の調節,体温の調節,また大脳辺縁系や脳幹毛様体系などと関連して意識,睡眠覚醒のサイクル,記憶,情動,行動などに重要な役割を有している。
したがって視床下部・下垂体機能を指標とした神経系・内分泌系の相互関係の解明は,中枢神経系の機能を神経内分泌学的に追求する意味でも重要なアプローチの一つと考えられる。本稿では最近臨床応用が可能になった視床下部ホルモンを中心に視床下部病理の診断や治療について述べてみたい。
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