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"うぶゆ"のいわれ
pp.17
発行日 1958年11月1日
Published Date 1958/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201565
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日本の民俗では,出産直後のうぶゆにはほとんど儀式的な行事を行わず,この時に用いた湯はけがれていると,太陽のあたらないところに捨てるならわしがある.2日目か3日目に産児につかわせる湯を多くうぶゆという.このときはじめて<湯はじめ>の祝を行う.3日目の儀式を室町時代以来<かみたて>,または<かみたれ>といつているが,瀬戸内海地方では<かみあらい>といつている.赤子を湯あみさせ髪をくしけずり,うぶ着をきせて人々から<おめでとうございます>ということばを受けるのである.
うぶゆに用いる水は特別の井戸や川や泉のもので,吉野熊野の山間地方では海岸まで潮水をくみに出て子供のひたいにつけてうぶゆとした例もある.大阪には産湯稲荷というのがあつてそこの水をもらつてゆあみさせると子が幸福になると信じられていた頃もあつた.このような考え方は古くからあつて,近江の三井寺はもと御井寺と書き,その境内にある井戸の水が,天智,天武,持統3天皇の初湯に用いられたという.そこにある井戸が貴人の初湯に用いられたと語りつたえられている.この種の伝説は各国にある
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