特集 母子保健,最近の話題から
周産期MEの現状と将来の方向
前田 一雄
1
1鳥取大学医学部産科婦人科学
pp.982-995
発行日 1983年12月25日
Published Date 1983/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206351
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はじめに
「ME」は,medical engineering(医工学)の略語であって,医療における工学の意味である。周産期,つまり胎児新生児期の状態というのは,成人にくらべて非常に特殊な状況にあるため,MEの助けを借りないと診断治療が困難になる。胎児ではとくにこの傾向が強い。すなわち,外界から直接に子宮内の胎児を肉眼観察することはできないし,成人では診察の第一歩で,簡単に行なわれている「脈をとる」ことさえ不可能である。出生後にも,未熟児の診察や監視に成人と同じ血圧計を使うことはできないし,監視の方法にしても異なっている。
このような理由で,周産期のMEは最近非常な発展をみており,胎児新生児医療に大きく貢献している。その背景には,最近の電子工学やコンピュータの急速な進歩があることはいうまでもないが,一部でいわれているような,工学的所産の無理な導入は,一般周産期医療では認められず,必要な機器が医学的要求に応じて使われている。まだまだ進歩は止まることがなく,将来の医療を改善することであろうが,周産期に最も必要な二部門,すなわち分娩監視(胎児監視)と,超音波診断の臨床的基礎が固まっていることは明らかである。周産期に使われるME機器ははなはだ多いが(表1),本年7月に開かれた第19回新生児学会の解説講演では時間の都合で表のアンダーラインの装置だけを取り上げた。
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