特集 母子保健,最近の話題から
周産期医療における倫理的ジレンマ—とくに胎児や新生児と人権
品川 信良
1
1弘前大学医学部産科婦人科学教室
pp.996-1005
発行日 1983年12月25日
Published Date 1983/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206352
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ヒポクラテスの誓いだけでは,医療は困難なことが多くなった
ヒポクラテスが医聖であることや,その誓い(The Oath of Hippocrates)に書かれている医師—患者関係や師弟関係のあるべき姿が,今でも尊重されるべきことに対しては,私はなんら異論をさしはさむものではない。しかし,あれから2,000年以上もたち,医療そのものがこれだけ大型化し,社会の仕組みもこれだけ複雑化した今日,あの誓いだけで医療をうまくやろうとしても,それは無理である。あの誓いをもう一度,読み直されればすぐおわかりのように,あのなかには,医師と社会との関係や,医療と社会との関係などは,全然といってもよいくらい触れられていない。したがって,あの誓いにいくら忠実であったとしても,現代において満足な医療を行なうことは,しばしば困難である。私たちが倫理的ジレンマに陥りやすい大きな理由の1つは,実はこの辺にもある。
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.