特集 いま分娩を考える
分娩時の体位とその生理的変化
佐藤 郁夫
1
1自治医科大学産科婦人科学教室
pp.301-311
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206222
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分娩体位の歴史的変遷
文献1)によれば,古代から18世紀末まで産婦のほとんどは,分娩第Ⅰ期,第Ⅱ期および第Ⅲ期を通じてなんらかの形の直立位(upright position)で分娩を行なっていた。したがって産科の歴史に関する書物には必ずといってよいほど,出産用の腰掛け(birth stool)(図1)に座っている中世の産婦と介助者の絵が収載されている。その姿勢は,立位(standing Position),座位(sitting Position),膝位(kneeling Position)または蹲踞位(しゃがんだ姿)(squating position)であったと推測されるが,いずれの場合でも体幹は,水平よりも垂直状態に近かったと思われる。
1738年,フランスの産科医Francois Mauriceauは分娩椅子に腰掛ける代わりに,ベッドに寝る体位を提唱した。彼はフランス王妃に仕えた産科医であったために,その権威でこの体位はヨーロッパ全上のみならず,新大陸にも広がった。Mauriceauの書物によれば,この臥位は産科医の分娩管理を容易にするために導入されたもので,母親や胎児のためではなかった。すなわち,産婦をベッドに横たわらせた結果,内診や産科的処置,さらには鉗子の適用など,すべて容易に行なうことができるようになった。
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