特集 いま分娩を考える
側臥位産についての一考察
南野 知恵子
1
1山口大学医療技術短期大学部
pp.291-295
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206219
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はじめに
もうずいぶん昔(1963年)のことであるが,英国に留学した時に左側臥位での分娩介助を初めて体験した。当時日本でのお産事情は,仰臥位産でなされており,分娩誘発剤としてのアトニン,アトニンOの時間注射や点滴の指示が多い頃であった。その頃は出産数も多く,われわれ側のニードにより,複数産婦が同時に分娩にならないよう観察し,それを調節するためにもアトニンの使用がなされていた。一晩の産直時に9例の出産を介助したことも思い出されてなつかしい。アトニンは,英国で開発されたのに,当時の日本は,家元をしのぐ使用国であった。英国では,ほとんど誘発剤は使用されなかった。
助産婦学生としてのかかわりや,助産婦の業務内容など当時の分娩事情は,当誌にも報告ずみであるが,妊婦には心身ともに分娩時教育がなされており,週末には夫婦学級が開催されていた。そのクラスの中で分娩時使用する吸入麻酔のデモンストレーションと同時に,使用方法の実地練習が行なわれた。その実技は分娩時大いに役立つものである。分娩第1期の後半から助産婦により,鎮痛・鎮静剤の使用や,定められた薬品と器具を用いての吸入麻酔が展開されるが,その時産婦は,陣痛室のベッドでも分娩台でも側臥位で吸入するようになっていた。
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