特集 いま分娩を考える
立ち産へのトライアル
体験者は語る
分娩室のチームワークに支えられて
後宮 祥子
pp.264-265
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206209
- 有料閲覧
- 文献概要
気恥ずかしさと期待と
それは全く思いがけない体験でした。確かに,平素の健診時より,主人もお産に立ち合えるかどうか伺ってはおりましたが,それは主人も「分娩室に入室して見学する」程度の軽い気持でした。それがたまたま,私のお産はA先生に立ち合っていただくこととなり,突然「へその緒は主人が切るべし」という話になって,気恥ずかしさと同時に,主人に父親としての自覚を強く持ってもらえるのではないかという大きな期待とが入り混じって,複雑な気持になりました。
病院に到着したのは午前10時半。先生の診察で,すでに分娩第1期も半ば頃とのことでしたので,昼すぎにはもう主人と陣痛室へ移りました。私はベッドの上で壁に寄りかかりながら胡座をかき,陣痛が来るたびにラマーズ法でやりすごすべく必死の形相,主人は音も形も大きすぎる掛け時計で陣痛の間隔を計りながら,私にレモンの輪切りを含ませてくれ,「これだけ主人をこき使えるのは,後にも先にも一度だけ?」などと,痛いお腹をさすりながら考えたものでした。全くこの時は「控え室で出番を待っている関取り」のごとく,デンと坐ってしかめ面。その間にもB助産婦さんが,赤ちゃんの位置を調べたり,図解入りで私共2人に分娩の詳しい説明をして下さったりで,これには大いに元気づけられました。
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.