特集 いま分娩を考える
立ち産へのトライアル
プロローグ
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.263
発行日 1983年4月25日
Published Date 1983/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206208
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昨年のある日,ある都市の,ある病院で"立ち産"が行なわれた。立ち産を"立位産"と呼ぶべしという声もあるが,そんなことはどうでもよろしい。つまり広義のアップライトポジションのお産である。私が仕掛人である。そして感激屋の友人の産婦人科医師Aが試行した。Aの記録写真を携えて,西に東に私は駆けめぐる。助産婦さんたちの意見を聞くためである。当然選別の意思がはたらいた。話しても,ただびっくりするだけだ,そう思う人は極力避けた。とはいっても10人ほどである。まず面識のある人、それに,あまり遠い人は困る。まだある。日頃,助産とは何か,お産とは何かを考えているような人でないと困る。そのような立派な助産婦さんは,日本全国にゴマンといることはよく知っている。しかし,結局,私の奔走範囲内の助産婦さんが,本論にご登場いただいた5名である。
まず,立ち産そのものを見学した中村さんがいる。自然出産法を学んで,現在はベルトコンベア式のお産に疑問を抱いている見るからにエネルギッシュな助産婦さん。テキパキと仕事ぶりが早いのは,服飾デザインの腕でみがきをかけたせいか。立ち産情報にいちばん感激の表情を見せたのは新井さんだ。写真を見た次の日,早速その病院に飛んで行って,つぶさに経過を書きとめてきた。産む,という現象にいつも新鮮な感性で接している助産婦さんでないとできないことだ。
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