口絵
ウニ卵の受精および分裂
平本 幸男
1
1東大理学部
pp.25-28
発行日 1959年11月1日
Published Date 1959/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201786
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卵と精子との合体——受精——によつて生物の発生がはじまることはこんにちでは常識になつている.ところが精子が卵に入るところがじつさいに観察されたのはそれほど古い昔のことではない.今から80年ほど前,HertwigやFolは海水中にとり出したウニやヒトデの卵に精子をまぜると,精子が卵の中に入り発生がはじまることを顕微鏡下でたしかめることが出来た.これが受精現象を直接観察した最初の例である.発生学も遺伝学も受精と云うことを基礎にしてなりたつているわけであり,この発見は生物学上大きな意義をもつている.その後種々の動物で受精が観察できる様になつたが,動物によつては体内受精をするものもあるし,又きり出した卵と精子とをまぜあわせただけでは受精がおこらないものも多く,ウニの場合のように容易に観察できる例はむしろまれである.このような点からウニの卵は発生学上すぐれた材料として多くの研究者によつて使われている.
のちに遺伝学の研究で,ノーベル賞をうけたMorganは,19世紀の終頃あらかじめ食塩を加えて濃くした海水でウニの未受精卵を処理してから正常の海水にもどすとしばらくして細胞分裂がおこることを発見した.その後Loebらによつてこの方面の研究がひじように発展し,種々の物理.化学的処理を卵にほどこすだけで,精子がなくても発生がはじまることがわかつた.
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