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第1土曜特集 生殖医学――基礎研究と実地診療の進歩
受精と卵活性化
Fertilisation and egg activation
若井 拓哉
1
Takuya WAKAI
1
1岡山大学学術研究院・環境生命自然科学学域
キーワード:
Ca2+シグナル
,
Ca2+ツールキット
,
卵活性化
Keyword:
Ca2+シグナル
,
Ca2+ツールキット
,
卵活性化
pp.919-925
発行日 2024年12月7日
Published Date 2024/12/7
DOI https://doi.org/10.32118/ayu291100919
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卵母細胞が胚発生を開始するために必要な一連の反応は,“卵活性化” とよばれる.受精時の卵細胞質内カルシウムイオン(Ca2+)の上昇は,動物における卵活性化の普遍的なシグナルであるが,精子によって誘導されるCa2+シグナルは動物種により大きく異なる.哺乳動物では,Ca2+オシレーションとよばれる反復性のCa2+上昇が数時間展開し,卵活性化を引き起こす.この特徴的なCa2+シグナルを形成するために,卵母細胞は複雑な制御を行う必要があるが,その分子基盤はいまだに解明されていない.また,Ca2+応答のパターンがその後の胚発生に影響を及ぼすことも知られている.受精によるCa2+上昇に最も大きく寄与するのは小胞体貯蔵からのイノシトール三リン酸受容体(IP3R)を介したCa2+放出であるが,細胞外からのCa2+流入もCa2+ソースとしてオシレーションの持続に必要である.また,Ca2+上昇に続いて細胞外へのCa2+流出や小胞体貯蔵へのCa2+補充が起こる.さらに,一部のCa2+はミトコンドリアなどのオルガネラへ取り込まれ,生理機能を発揮することが知られている.これらのCa2+ホメオスタシス制御に必要なCa2+チャネル,ポンプおよび交換体などの分子/機構はCa2+ツールキットと総称され,細胞は細胞内外の環境変化に応じて一式のCa2+ツールキットを使い分けている.ここでは,卵活性化におけるCa2+ツールキットを用いたCa2+シグナルの制御機構について概説する.
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