Medical Scope
分娩発来機構[2]
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.612
発行日 1982年7月25日
Published Date 1982/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206063
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先月につづき,分娩発来機構をめぐる話題を今月もお話しします。プロスタグランディンが分娩の発来の主役であることはすでに述べましたが,皆さんの耳にはもうひとつの陣痛を起こすホルモンとして知られているオキシトシンoxytocinはどうなっているんだという疑問が当然ながらでてくることでしょう。このオキシトシンは分娩を誘発するときに母体に投与すると陣痛が発来し,やがて分娩となります。ですから,分娩に大きく関与するホルモンのように思われていたのですが,実は,考えられていたほどの大役は果たしていないことがだんだんとわかってきました。
オキシトシン,PGF2α,PGE2はともに平滑筋を収縮させる作用があります。オキシトシンのみを投与した場合,妊娠末期の妊婦では子宮筋を収縮させて陣痛を起こします。しかし,妊娠中期の症例にオキシトシンのみを投与しても,なかなか陣痛は起きないのです。ところが,妊娠中期の人工流産などでも,オキシトシンではなく,プロスタグランディンを用いると陣発が発来して分娩に至ってしまいます。このように,プロスタグランディンとオキシトシンは同じ陣痛を起こす物質でも,妊娠中期に作用する,しないの差があるのです。これはどういうことかといいますと,オキシトシンは子宮筋そのものにだけしか作用しないのですが,プロスタグランディンは子宮の頸管にも作用するということなのです。
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