グラフ
古典的労働は安産への接近法—岡崎市・吉村先生の主張と実践
八木 保
,
本誌編集室
pp.523-526
発行日 1982年7月25日
Published Date 1982/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206046
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現代人は労働の負担を機械に譲り渡し,優雅な時間と怠惰な時間を過ごすようになった.身体を動かす必要はなくなってしまったが,しかし身体の方では動くことを要求してくる.そのため,現代人はお金を払って身体を動かすという事態を迎え,スポーツ教室はどこも花盛り.その光景はどこかに,チグハグさを含んでいるようでもある.
そのチグハグさは出産にもみられることだが,岡崎市で産科病院を開業している吉村正先生は,現代女性の難産は文明のもたらした弊害の大きいことを強調,人間自身のもつ能力をもっと引き出さなければならないことを日頃唱えていられる.そこで,その解決の一環として,病院の裏の林の中の庭で,スクリーニングのあと希望者に,肉体的労働による安産コースをすすめている.労働の中身は,一世代前の人間なら必ずこなさなければならなかった、日常生活のための諸々の仕事である.古典的な労働は安産への近道となることが第一の恩恵だが,労働をしながら人は心身との会話を行なうようになるという.肉体的労働体験が精神的な経験としても積み重ねられていくことになるといえるのだろう.
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