グラフ
ごく日常の生活がそこに—音と光の世界に生きる1人として
岩下 守
,
吉見 輝之
pp.906-911
発行日 1979年9月1日
Published Date 1979/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918761
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音と光を幼少のころに奪われた石井さん(本誌連載中‘手のひらで知る世界’の筆者)は,手のひらに字を書いてもらい人との会話をスムーズに行う.どんなに早く書いても,アルファベットも漢字も数字もすぐ読みとってくれる.そして正確な発音で返事をしてくれる.
耳が聴こえず,目が見えない,そんな障害を持った人を私たちは二重苦の世界に生きる人という.たしかに耳が聴こえず,目が見えないことは,障害のない者にとっては想像することすらできぬ激しい苦しみであろう.そして私たちはその人たちを苦しみにある人,苦しみにめげず,けなげにもがんばっている人とみてしまう.憐憫の気持ちさえいだいてしまうことも否定できない.そして独りで生活している石井さんに出会うと驚いてしまう.どうして,どうやって生きているのかといぶかしく思う.しかし,生活の実際を知ると,それが称賛に変わる.
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