サルとヒトの比較産科学・2
サルのお産(Ⅰ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.126-135
発行日 1980年2月25日
Published Date 1980/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205671
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I.ニホンザルのお産の記録
1971年4月の末,埼玉県長瀞の野猿公園は晩春の落日で紅く染まっていた。3mの金網が傾斜のある公園のフロアに長い影を落としている。その金網から1頭のメスザルがゆっくりと降りてきたかと思うと,半座位の姿勢でゆるい上下運動を始めた。
この奇妙な行動に気づいたのは男女の学生2人づれである。男のほうは金井塚務君,女性は岸恵子君。いずれも埼玉大学教育学部の学生である。動物好きのこの2人はサルのお産を記録しようと,買いたての8ミリカメラをぶらさげて,何日も前からこの野猿公園に待機していた。3日間は無為に過ぎた。翌朝行ってみると,生まれたてのアカンボを抱いたメスザルが何頭かはいた。
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