助産婦事典
先天奇形症候群,遺伝病と助産婦の役割
塩野 寛
1
1札幌医科大学法医学教室
pp.121-124
発行日 1980年2月25日
Published Date 1980/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205670
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この頃の新聞でよく目にするのは,無責任な親によって生み落とされて死んだ子供や,駅などのコインロッカーから発見された子供の死体,虐待されて死んだ子供のニュースなど,健康な体で生を受けながらも,親失格者の無責任によって幼い生命を閉じるに至った,これらの出来事には目をおおうばかりである。また一方では,ダウン症候群のような"精薄"となる運命に生まれて,母親が子供の将来を絶望し,子供を殺し自分も自殺したり,アペルト(Apert)症候群のように,知能は正常にもかかわらず子供の顔貌が奇異なために,やはり将来を不憫に思い,子供を殺して自分も自殺するような例も新聞で報道されている。
治療不可能な先天異常,奇形症候群においては,医師のみならず助産婦などのパラメディカルスタッフが,母親の相談相手になっていたならば少なくとも自殺までおいこまなくてもすんだ例も含まれているように思える。このことは逆に,私たちの言葉一つで医療不信や死においやることにもなりかねないといった,医療従事者の重い責務を示しているともいえる。筆者ば遺伝外来で10数年,ダウン症候群を含む先天奇形,遺伝病の患者および母親と接してきたが1)〜3),助産婦にも先天奇形,遺伝についての基本的な知識と,障害をもつ親への話し方を会得していただき,不幸な子供をもつ両親に正しい援助がなされることを願って筆をとったしだいである。
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