サルとヒトの比較産科学・3
サルのお産(Ⅱ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.191-198
発行日 1980年3月25日
Published Date 1980/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205683
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4)前号の「サルのお産(Ⅰ)」についての考察
前号にはヒヒまでのお産を記したが,読者は一読してどのような受けとめ方をされたであろうか。ヒトと対比させること,サルの種間での比較,オスの干渉のあるなしなど,見る立場,考える立場で受けとめ方も変ってくるだろう。一般に,サルのごく一部の行動をみて,それをすぐ擬人化して考えることははなはだ危険な短絡と言わざるを得ない。このことは,当雑誌の特集「母と子のきずな」(1978年,32巻9号)で京大霊長研・杉山幸丸さんも戒めておられる。つまり,「サルでもこうだから人間でもこうして当然だ」と単純に考えてしまって,たとえば,「サルの社会でさえボスが絶対権力を持って,順位制というきびしい秩序の中で生きているのだから,人間社会で厳しい秩序が守られるべきなのは当り前だ」という論理の展開は飛躍しすぎだ,というのである。サルをみてヒトをふり返る場合,進化の軌跡を良く理解し,ひろい角度から比較してゆく態度が大切だということだ。
さて,今までのサルのお産をふり返ってみて,共通な点を読者はもうお気づきであろう。
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