サルとヒトの比較産科学・4
サルのお産(Ⅲ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.270-278
発行日 1980年4月25日
Published Date 1980/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205697
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前号の終わりに3枚の骨盤の図を提示しておいた。サルの骨盤,ヒトの骨盤の両者を見くらべて読者は何を発見されたことだろう。この図が実際に必要なのは,次号の「直立二足歩行と難産」のところである。今までサルのお産を展望してきて,その安易な経過に読者はきっと驚かれたにちがいない。
一方,サルにももちろん陣痛なるものは存在し,あるいはそれに同調させる運動,あるいは和痛のための体位変換,更に,系統進化し,類人猿,とくにゴリラのように半2足歩行となるとお産に要する時間も延長してくることを知った。そして今後は,未開民族のヒトを含めて,霊長類全般を眺めてみると,彼らは,お産の体位としては,出てくるものを押し出すために,もっとも合理的な躯幹直立姿勢としてのしゃがみ,坐りの体位でお産をしていることを知ったであろう。現在では,病院産が圧倒的で,そこでは例外なく膀胱切石位が採用されている。それがはたしてお産の本質にふさわしい体位なのかどうか,それを考える前に,人類が辿ってきたお産の体位をふり返ってみることにする。
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