特別企画 母乳哺育の推進へ向けて
桶谷式手技研修会とその広がり
研究・調査・報告
母親たちが育児粉乳銘柄を選択する時の態度について
永井 生司
1
1横須賀共済病院 産婦人科
pp.508-512
発行日 1978年8月25日
Published Date 1978/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205419
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1.はじめに
母乳主義運動のキャンペーンが繰り広げられてから久しい。母児にとって,母乳が最も好ましいことは,今さら確証をあげられなくても,産科医療従事者はもちろんのこと,おおかたの母親は十分に承知している。にも拘らず,母乳栄養法は目に見えて普及しない。
母乳栄養法を行う母親の数が減り始めたのは,第二次大戦後の日本経済が急速に回復を始めた頃からであろう。経済の動きが社会構造を変え,母性をもねじ曲げているとも考えられるが,人の意識が経済によって支配されているとすれば,母乳主義運動も,社会,経済の動きと人の意識の関係を十分に把握した上で具体的な実行手段を提起しなければ,思うような進展は望めないであろう。母乳栄養法の退潮は,日本より遙かに経済発展が早い時期に,強大な動きとして起こり,繁栄を誇った米国では,1946年に38%,1956年には21%に母乳栄養率が落込み,重大な問題として提起されている1)。
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