母と子を看とるなかで
生命とひきかえに
横尾 京子
1
1淀川キリスト教病院
pp.197
発行日 1978年3月25日
Published Date 1978/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205356
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例年の如く12月に入ると病院玄関の樅の木が飾られ,闇の中での灯の点滅は聖夜を待ちわびる者の心のときめきのように見える。しかし26日の夜は既にその点滅もなく,彼女の死のためかいっそう暗闇が仕事を終えた私に冷たく被いかぶさってきた。
彼女はある開業医で4か月前に分娩を終了したが輸血を受けてしまった。そして産後1か月頃には全身倦怠感が強くあらわれ,再びその開業医を訪れると風邪ということで治療を受けた。しかしその治療にもかかわらず,ある日突然意識は混迷状態となり,医師は今度はそれをヒステリーと診断し精神病院を紹介したのである。彼女の義姉は事の異常に気付き,勤務先の病院へ彼女を紹介した。内科に緊急入院後,間もなく激症肝炎の集中ケアーが開始されたが,その甲斐もなく1週間後には他界した。26日の昼過ぎのことである。
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