連載 医療ソーシャルワーカーの相談窓口から
未成年者の婚姻と届出
田戸 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.446
発行日 1986年5月25日
Published Date 1986/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206885
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未成年どうし,あるいは片方が未成年という結婚の場合,相方の親の猛反対にあって,それぞれの家庭内で親子間の対立を生じることがしばしばある。親達が反対するのは,子供への深い愛情があればこそなのだが,子供の判断力に対する心配や,将来に期待のもてる相手かどうか,選択に際して十分に慎重であったかなど,子供の人生に誤りのないようにと願う気持に起因している。ましてや,妊娠が先になった場合には,問題はさらに深刻になる。
葛飾赤十字産院では,産科受診の未成年の妊婦に対して,ソーシャルワーカーが全員面接を行なう。そして,妊娠・出産・育児に関して,妊婦自身が,今の自分の立場をどう認識しているのか,あるいはまた妊娠および結婚について,どんな態度,思考をもっているのかを,その家族関係を含め,また配偶者側の立場をも考慮して,親子間あるいは両家庭間との仲介的役割を果たすことが多い。なぜなら,たしかに未成年と呼ばれる彼女らは,未成熟な人間で,思考の不足さはある。しかし,彼と出会い,ある状況下で性関係をもち,そして真剣に愛情ある結合を望んでいるのであれば,当然その愛情は育って欲しいと願うからである。と同時に,愛情だけでは生活していけないという現実のあることも,彼女らに知ってもらわなければならないと考えるのである。ともあれ,この種の相談には,何といっても親の承認を得ることの困難さと,未成年者が一人前の大人として,社会へ参加する手続き上の問題が伴う。
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