わたしの分娩体験記
2度の分娩体験
藤井 素子
pp.63
発行日 1974年1月25日
Published Date 1974/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204648
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朝のテレビのモーニングショーを耳に,6か月になる子供を歩行器で遊ばせながら哺乳びんを洗っていた私は,テレビから聞こえてくる子供を亡くした母親の詩に思わず側の子供を抱きあげ泣き出してしまった。
あれはもう1年半も前のこと。日頃から健康で妊娠中もなんら異常なく,あの日は荷物を持ち,病院まで歩いていった。第1期は思ったより軽く短く,心軽く分娩室へ,全身の力をふりしぼって怒責をくりかえすこと1時間余り,やっとの思いで鉗子の力を貸りて娩出。しかし元気な初声の代りに医師の指示の声,助産婦のいそぎ足の音,処置の音が疲れきった私の頭にビンビンとひびく。
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