特集 麻酔分娩
麻酔分娩体験
無痛分娩の体験
梁川 祥子
pp.54
発行日 1969年4月1日
Published Date 1969/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203733
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- 文献概要
出産に対する深い知識もないままに親になることになった私は,出産に関する本を読みはじめた.本を読んでみても,又経験者の話しなどからも,出産とは大変な苦しみを伴うものに思えた.そんな折に,無痛分娩を経験したおばより無痛分娩が,痛みの点でも苦痛が少ないという事を聞き,私は初産を無痛分娩にする決心をした.このように無痛分娩に対する深い知識もないながら,現代の進んだ医学と医者を信じていた私は,起りうるかもしれない障害などに対しては何の不安も感じていなかった.無痛分娩は,苦痛を伴わないものと考えていた私にとっては,長男出産を経験してみて感じた事は想像していた事と大分違うということである.数分おきにくる陣痛がある程度,定期的に来るまで,自分の力で耐えなければならず,この点は自然分娩と同じであると思う.しかし一たん,注射をされてからは,しだいに意識を失い,陣痛からも解放され深い眠りの中で何の苦しみも味わうことはなく,勿論赤坊の産声も知らないので子供を産んだのだという深い感激を味わうことは出来ない.
こうした無痛分娩で産んだ長男が,一ケ月の検診で,斜頸を診断された折は,後に無痛分娩とは無関係である事がわかったにもかかわらず,私の心は,やはり無痛分娩の障害ではなかったではなかろうかという疑問は,容易には消えなかった.
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