連載・9
実地臨床における産科MEその9
坂元 正一
1
,
藤井 仁
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.24-29
発行日 1971年11月1日
Published Date 1971/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204247
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胎児血pHの臨床的意義
気象その他物理的,化学的諸変化のような外部環境の変化や細胞内の異常代謝,各種の疾患などに際して,生体は生命を維持するためにいろいろな機能をあげて体液の恒常を保つように努めています。水素イオン指数pHであらわされる体液の水素イオン濃度は,体液の恒常性を維持するうえにたいへん重要な役割をしています。そして細胞が生理的代謝を行なっている時のみならず,異常代謝の状態になった時(このような時には乳酸焦性ブドウ酸,ケトン体が大量に出現します)でもこのpHが一定の範囲内にあるように,体液の酸,塩基は無機,有機電解質と密接に提携して平衡を保ったり,また,各種代謝産物を生体は胃,腸管,腎,肺,皮膚という門戸を通じて処理したりしています。
体液は細胞外液と内液に大別され,細胞外液はさらに組織間液と血漿に分けられますが,細胞内液および組織間液は採取が困難です。組織細胞と直接接触する立場にある細胞外液の血漿と組織間液の両者は,毛細血管壁を通して活発に交流していますから,血漿の反応をもって全身の細胞内外液の反応を十分にあらわしていると考えてよいでしょう。したがって,体液の恒常性を示す代表として採取可能な血液が,そしてそのpHが選ばれます。
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