連載・3
実地臨床における産科MEその3
坂元 正一
1
,
藤井 仁
1
1東京大学医学部産婦人科学教室
pp.38-45
発行日 1970年8月1日
Published Date 1970/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203971
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妊娠中における胎児心電図
胎児心筋の収縮に伴って生ずる活動電位の変化が胎児心電です。妊娠中は普通母体の腹壁上においた二つの電極から電位変化をとり出して(双極誘導)記録します。起電力の発生部である胎児心臓から誘導電極まで羊水,子宮壁,筋肉,脂肪,皮膚等多くの層を通しての電流を把えるために得られるエネルギーは小さすぎ,成人用心電計そのままではとても記録できません。胎児心電波の腹壁上で把えられる大きさはおよそ50μV以下(μVは百万分の1ボルト)で1mV(千分の1V)前後の成人心電図にくらべて20分の1程度です。そのために入ってきた電気信号(入力信号)を大きく強められるようにしてある(増幅度を高めた)胎児心電計を使用する必要があります。
腹壁上誘導では胎児心電図は図1のように母体心電波形にまじって胎児QRS波が記録されます。成人心電計で行う,Ⅱ,Ⅲ誘導法は心臓の電気軸からみてR波が一般に上向きになる誘導法ですが(図2,3),胎児心電計では頭位例の胎児の心臓の電気軸を主体に考えて胎児R棘が上向きになるように成人のⅡ,Ⅲ誘導の場合と逆向きに即ち正電極を母体頭方つまり子宮底の方に,負電極を恥骨結合のすぐ上に装着しています(図4)。従って胎児R棘と母体R棘は頭位例の場合には逆方向に記録されます(図5)。
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