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胎児心音による心拍数計の臨床的意義
胎児心音計による胎児心機能監視の目的は前号で述べたように,現在では心拍数の変化を聴覚に訴えて連続的に監視することにつきるわけですが,日常臨床へのこのような応用が,従来のようなトラウベ聴診器による胎児心音数の短時間の観察にくらべて胎児危険の予知,胎児予後の決定に著しい改善をもたらしたことは疑いありません。しかし,どんなに心音を連続監視しても,情報に対する診断の基準が従来の域を脱しなければ,連続監視の意義に飛躍的な向上を期待することはできません。そのためには分娩時に母児の生理的な状態がどのように変動するかを知り,さらにそれらの変動の一環として,最も診断しやすい胎児心拍数の変化と,その意味を解明することが先決の問題となってきます。当然,客観的データにもとずく分析が必要とされますが,前号図6に示すように胎児心音図は記録として残りますし,心拍数を読みとれますから心拍数の変化を検討するための客観的データとして使うことはできます。しかし,心音図の上から一拍毎に変化する心拍数を時々刻々と,正確に把握することはできません。また,心音図記録のためには,少なくとも1秒間に1.0〜2.5cmの速さで記録紙を搬送しなければなりませんので,かりに1秒間1cmの紙送り速度としても,娩出前30分間の記録を残すとすれば18mという膨大な記録紙量となってしまうために,長時問にわたる記録は困難であり,そのうえ分析にも不向きです。むしろ,心拍数の変化だけを連続記録できれば,このような問題は一挙に解決してしまうわけで,そのために開発された心拍数計は,心拍数変化の客観的データを得るうえにきわめて重要なものといえるでしょう。
心拍数図を記録するときの紙送り速度は,心拍数変化と関係深い陣痛の変化を,陣痛曲線として連続記録する時に要求される紙送り速度と同じ程度ですので,同時に記録するのに大変好都合です。
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