連載・6
実地臨床における産科MEその6
坂元 正一
1
,
藤井 仁
1
1東京大学医学部産婦人科教室
pp.34-38
発行日 1971年4月1日
Published Date 1971/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204103
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分娩中における胎児心電図の臨床的応用
分娩中の胎児心電図は誘導法によって大きく2種類にわけられます。ひとつは妊娠中に行なう胎児心電図検査と同じ方法の母体腹壁上誘導法であり,もうひとつは破水後に経腟的に児頭あるいは臀部などに直接電極をつける経腟誘導法です。
母体腹壁上誘導による胎児心電図については妊娠中における胎児心電図とその臨床応用の項(本誌24巻8号38〜45ページ 実地臨床における産科MEその3)で胎児心電計の使用法や使用時の注意とともにすでに説明したように,母体心電,母体筋電,子宮壁筋電など多くの雑音が胎児心電図に混入してきて,あきらかに記録されるのは心室波形のなかのQRS波のみのことが多く,他の波形が検出されることはまれです。私達の教室の研究でも,最近のME技術の進歩によって開発された低雑音増巾器(装置内部の雑音がきわめてわずかしか発生しない心電計)を使用したり,電極など雑音の混入する原因について研究の目的で厳重に条件を整えてもなおP,T波の検出はほとんど不可能でした。またQRS波については電気軸R/SあるいはRS波型分類がfetal distressと関係があると発表している研究者もあります。私達ははっきりとはその傾向を認めることができませんでした。したがって腹壁上誘導の時に診断の対象となるのはふつうはQRS波のみであり,妊娠中は胎児生存の早期診断,胎児の生死の判定,双胎の診断および胎位の判定を目的とし,分娩中は胎児心拍数の変化を監視することを目的として利用されることになります。
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